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映画『溺れるナイフ』感想 写真集みたいな映像と詩的な心理描写が美しい!【ネタバレ】

ジョージ朝倉のコミックを実写映画化した青春ラブストーリー『溺れるナイフ』が11月5日に公開となりました。監督はわずか26歳の山戸結希。キャストは夏芽役に小松菜奈、コウ役に菅田将暉と旬の若手俳優が起用されています。

観客は、9割が10代から20代前半までの女性でした。

私は、乙女が見るものは乙女として見る技術を会得しています。

ということで今回は、完全に乙女になって見てきましたよ!

内容としては、ティーンの乙女に刺さる設定をしっかり抑えていて、タイトルの通り『溺れるナイフ』的な息苦しさと危うさを感じる作品になっていました。

壁ドン!顎クイ!をメインにどしっと据えるような今時の作品ではなく、「少女漫画を完全にはみ出しているなぁ」という印象です。

SNSなんかを見ていると「原作読んでいないと話しについていけないよ」と言われていましたが、個人的には全然そんなことなかったです。

大人な分、読解力的なものがあったんでしょうか。年の功ってやつかもしれません。

※このあとの記事には、映画本編のネタバレが含まれます。また、内容は批評や論評といった類のものではなく、感じたことをそのまま書き出しただけの寄せ集めのようなものです。見に来ていただいた方には、友人と映画を見終わった後にあーだこーだ言いい合う時のような軽い気持ちで読んでいただけると嬉しいです。

「分からない」ということは全然なかったよ!

レビューサイトなんかでは、「原作を見てないからここが分からない」「伝わらない」なんて声がたくさん書かれていました。

ただ、私は正直分からない部分、辻褄が合わなかったところがあったとは、全然感じてないです。

ということで、まずはレビューサイトなどで良くあった疑問に原作未読の私が、答えて行きたいと思います!まぁ、間違ってるかもですが。。。

夏芽はなんでコウちゃんに惹かれたの?

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(C)ジョージ朝倉講談社 (C)2016「溺れるナイフ」製作委員会

イケメンだから…神さんだからに決まっとるじゃろ!

海、山、川を自由駆け回り、火の舞を踊る。

神々しい自然をコウちゃんそのものとして見るのが序盤の正しい見方だったんじゃないでしょうか?

追いかけても捕まえられないし。逃げても追いつかれる。まさに神さんとして描かれていましたよね。少女にありがちな、神格化。(ありがちとか言ったら怒られるかな)

神さんと一緒にるんだから「うみー!」「やまー!」とか叫びたくなるほどの全能感を得られるのも当然です。だからこそ、夏芽は自分の全てを差し出す覚悟で居たわけですね。

ティーンが初めて彼氏彼女ができたときの世界で一番幸せで、世界の中心は自分たちだと感じている様子が良く表現できてたんじゃないでしょうか。

つまり、女の子のが憧れるのは、手の届かないような神さんなのさ。吸ったら甘いくらいの椿じゃもの足りないのさ。そういうことなのさ。

事件の後なんで2人は別れたの?支え合うものじゃないの?

馬鹿野郎!

神さんが、オタにボコられるわけないだろうが!

まさに神が宿ったが如くの全能感を持った2人にとっては、あり得ないことだったわけです。

あの暴行事件で、そんな気持ちは全部幻想であることに気づかされてしまいましたよね。

2人でいても現実からもう這い上がることはできない。むしろ、現実の不条理を思い知らされるだけ。ましてや、全能感なんてありえない。

お互いの為に一緒に居られないと夏芽が言うのも当然じゃないでしょうか?

コウちゃんが暴力に傾倒していったのも、自分に力がないことを思い知らされたからでしょう。

なんで最後またオタがやってこれたの?

まぁ、確かに現実的には過去に事件があれば、親や運営側は再発防止を徹底してなきゃいけない。

同じ日に同じ轍を踏むというのは、あり得ません。喝です。

けど、まぁそこに関しては、「呪い」を断ち切る為のご都合主義はあったと思います。

恋人を神に見立てて展開してきた話ですから。何かしらの決着は、話を締めくくるために必要ですよね。ここは、ちょっと俯瞰で見なきゃいけないところかもです。

女子にとっては、恋の恨み、神への冒涜は、万死に値するということでしょう。

ただ、行くところまで行ってしまうとは正直思いませんでした。「◯ろしてー!」と叫ぶところはちょっとしたホラーでしたよね。タイトルに『ナイフ』がついてるのは伊達じゃなかったです。

ここら辺の描写が単なる少女漫画ではないと言わしめるところなんだと思います。

100:0で大友の勝ちでしょ!

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(C)ジョージ朝倉講談社 (C)2016「溺れるナイフ」製作委員会

私がこの映画の中では一番印象に残っているのは、「友達」の大友でした。

男ならコウちゃんよりも大友みたいな存在になりたいと思っている人が多いんじゃないかと思います。

眉毛のミニコントなんてめちゃくちゃ笑えましたよね。そっからのチューと。なんか、いい年して胸キュンしちゃいましたよ。

振られっぷりも潔くて良かったですよね。

ただこれだけは言いたい!

「なんで、少女漫画っていっつもいいやつが振られるんすかー!大友めっちゃいいやつじゃん。100:0で大友の勝ちでしょうに!」

そんなこんなで、少女漫画の主人公はいつも好きになれません。

いいやつが振られない少女漫画あったら教えてください。笑

詩的な心理描写

乙女の世界観というのは、ほんとおしゃれにできているというのをこの映画を見て改めて実感しました。

足のネイル?を塗るときなんかも青、青、青ときて一回赤を塗ってからの青。

コウちゃん、コウちゃん、コウちゃんときて大友。やぱりコウちゃん。

乙女の揺れる心理描写をネイルで表現していました。男の発想にはないものですね。

大友のイメージに椿を持ってくるところもそう。色を繋いでいく演出なんかもしゃれおつでした。

やっぱり少女漫画ではある

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(C)ジョージ朝倉講談社 (C)2016「溺れるナイフ」製作委員会

中学生の頃は、なんだか素朴でもっさりした感じの松永カナ。自分の容姿に自身が持てなくて声を掛けるのも遠慮がちでしたし、よく思われたいのか気を使い過ぎでしたよね。

それが、完全なるいわゆる高校デビュー。垢抜けてめちゃくちゃ可愛くなりました。映画内ビューティーコロシアム。「高低差がありすぎて耳キーンなるわ」ってやつ?

一方、事件後完全に輝きを失った夏芽は、一緒にご飯を食べる友達もいない状態。

容姿が変わったカナは、なんだか誇らしげに自信をもって夏芽に話しかけるというシーンがありましたよね。そこが、なんとも少女漫画らしいと感じたのは私だけでしょうか?

容姿がそのままイコール自分の自信につながるって、やっぱり女の子の感性なんですよね。なんだか、勝ち誇ったようなカナには、背中がむず痒くなるような嫌な感じを覚えました。

あのまま素朴な感じで良かったんじゃないの?と少女漫画慣れしていない私は、思ってしまいました。

まとめ

原作は全17巻あるそうで、ファンからするとあそこも入れて欲しい!なんであれを入れないんだ!と不満が出るのはしょうがないです。

ただ、一応原作が映画化になるときの原則としては、全く別物になるという心構えが必要だと思います。

私自身は、フラットに見た結果アラサーおっさんにも関わらず十分楽しむことができました。あ、そういえば男であることは、触れずに書いてきました。女性が書いている感想だと思った方申し訳ありません。笑

試し読みもできる作品なので、気になった方は是非チェックしてみてください!

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この映画を撮った山戸結希監督は「あの娘が海辺で踊ってる」「5つ数えれば君の夢」など少女の過剰な自意識を描いた作品が非常に評価が高いそうです。なんだか過去の作品もチェックしたくなりました。

そして、なんといっても『デストラクション・ベイビーズ』の二人は相変わらずいい演技してましたしね。この点に関しては、誰も異論ないところだと思います。

時間があるときに絶対見直したいですよね!

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