ネタバレ感想『アイインザスカイ』あなたは80人を救うために1人の少女を犠牲にする決断ができますか?
さてー!
正義とは何か?80人を救う為に1人の少女を犠牲にしても構わないか?
こういった答えの難しい…というか、答えがあるのかさえわからないことを考えるのが好きな立川あつです。
ドローンを使用する現代の戦争の闇を浮き彫りにした軍事サスペンスとして注目を集めている映画『アイ・イン・ザ・スカイ/アイインザスカイ 世界一安全な戦場』が1月14日に全国公開されます。
イギリスで脚本賞を受賞し評価の高い今作ですが、都内ではtohoシネマズシャンテで先行上映されています。
私は、いち早くクリスマスの日に観に行ってきました!
レビューやSNSなんかでは、ゴジラの出てこないシンゴジラなんて言う風に例えられています。
確かに、軍事的な決定にどれだけの人の思惑、思想、信念、葛藤があるのかということを描いているということでは一致しています。
ただ、この『アイインザスカイ』はあくまで現実に起こりうることを映画で表現していました
そういった点ではエンタメとしてだけではなく、戦争や国の安全について考える良い題材になる作品だと私は感じました。
みなさんは、80人を救う為に1人の少女を犠牲にしてでもドローンからミサイルを打ち込みますか?
後半に一応自分なりの答えも書いています。ヘタレ人間の臆病な決断を是非ご覧ください!
※これから先、映画本編のネタバレが含まれます。また、内容は批評や論評ではなく、感じたことをそのまま書き出しただけのものです。友人と見終わった後に「あーだこーだ」言いい合う時のような軽い気持ちで読んでいもらえると嬉しいです。なお、コメント大歓迎なので気になったことがあれば、是非コメントを残して言ってください!
移民推進の闇が思ったよりも深刻みたい
この映画でに出てくるイスラム過激派のターゲットには、イギリス人女性が含まれていました。
移民推進をすると当然、様々な宗教を持った人たちが集まります。当然イギリスには宗教の自由があります。
イスラムが身近になり国内で改宗・先鋭化した結果、テロ活動に加わるようになったという設定です。
日本でも議論に上がる移民推進、反対の議論ですが、正直私はこんなリスクがあるなんてことは考えもしていませんでした。
「文化の違いからくる軋轢にどう対応するのか」くらいなものかと思っていましたが、現実にはもっと深刻なリスクが伴うようです。
日本は比較的イスラム過激派のテロの標的からは遠い存在ですが、それでも偶発的に被害に遭う人がいます。
それだけでなく、加害者になる可能性も現実的なものなんですね。
グローバリズムとか、多様性の受容とか差別反対など綺麗事で割り切れない問題も存在しているということが、この映画を見て分かりました。
もはや、戦争は会議室で起きてるんだ!
誰もが知っている踊る大捜査線の名言。
事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!という言葉は、現実をには当てはまらなくなってきているようです。
この映画では、ミサイル発射の決定までのプロセスのほとんどが現場とは離れた場所で行われていました。
副題の言葉を借りると「世界一安全な戦場」つまり、会議室や遠く離れた基地内が舞台になっています。
しかも、その決定を行う人たちは、会議室に入る直前まで娘のプレゼントをどうするか迷っていたり、エビに当たって下痢気味でトイレから連絡を受けたり、コミカルに描かれる始末。
現場の緊迫した雰囲気とは、かけ離れた空気感の演出も印象に残っています。
そして何より驚いたのは、ミサイル一つ打つのにこんなにめんどくさい手続きが必要なのかということ。
法治国家としてちゃんとしたプロセスを踏むということは必要なことです。しかし、現実は否応なしにイレギュラーな出来事が起こります。
想定外の自体への対処となると、これほどノロマになってしまうのかと半分呆れてしまいました。
映画だと分かっていながらもやきもきしたのは私だけではないですよね。
「テロリストは、なんでもありなのに…」と子供のような思いも、正直湧き起こりました。
子供の頃イメージしていた未来の戦争は、ターミネーターです。歩行型のロボットやラジコンのような機械にレーザー銃を取り付けとのドンパチ。
現実は、想像以上に地味で残酷なものです。空と小型の監視カメラによる状況把握。オモチャのようなドローンからのピンポイント空爆。
一方、科学力を持たないテロリストは、いまだに前時代の装備でルール無用の戦争をしています。
米・英軍は相手に一切攻撃の余地を与えずに、ミッションを終えることができます。
テロとの戦いは、地道なスパイ活動による情報収集とピンポイントの空爆にによって行われている。恥ずかしながらそんな事実すら知りませんでした。
誰かの言葉で、「正義とは自己犠牲である」といいますが、この戦争には自己犠牲がほとんどありません。むしろ、テロリストの方が自己犠牲の元に目的を成そうとしています。
この戦い方では、兵士が病んでしまうのも理解できます。
正義を感じられ機会はなく、相手を一方的に殺すことだけをこなしていかなければいけないわけですから。
しかも、そこに至るまでのプロセスは会議室で決められて情報が降りてこない。
まさに、戦争は会議室で起きている!そんな十数年前なら、完全に冗談だったものが今や現実に近づいているということを実感しました。
あなたは80人を救う為に1人を犠牲にしても良いと思いますか?
劇中では、様々な要因が重なり推定80人の命を救うのか?その為に目の前の1人の少女を犠牲にして良いのか?という選択を迫られることになります。
究極の2択です。
現場では、なんとかして少女を遠ざけようと努力しますが、それは叶わない。
そうなった時、私たちはどういった選択をすれば良いのでしょうか?
この映画では、軍事的な目的と立場から一貫して爆撃を主張する人。
とにかく犠牲にすべきではないと主張する人。
意思決定できる立場にありながら、決定をたらい回しにする人。
疑問を感じながら従う人。
疑問を感じて権利の中で意見をいう人。
様々な立場の人の思惑・葛藤がでてきます。答えを出すのは、当然簡単ではありません。
ただ、これはやっちゃいけないということは明確だと思います。
それは、とにかくテロリストをやっつけろと少女の命に対して何も考慮しないこと。そして、選択を放棄して「とにかく戦争は反対だ」と国会前に逃げ込むことです。
現実に起こりうる問題に対しては、明確な答えを出しておく必要があると私は思います。
そう考えると、劇中にも1人やっちゃいけないことをやってる人がいました。あくまで逮捕を優先して「とにかく少女を犠牲にするべきでない」と主張していた女性です。(役職はなんだったかちょっと忘れちゃいましたが…)
これは、80人の犠牲が出るリスクを単に矮小化してないものとして考える逃避じゃないでしょうか?
そりゃ、その先にリスクがなければ何もこんなに右往左往しなくて済みます。しっかりと80人の犠牲が生まれる可能性も考慮した判断でなければ、答えにはなりません。
それをしないのは、単なる無責任でしかありません。
しっかりと条件を踏まえた上での答えが、検討に値するものだと私は考えます。
例えば、何人かの友達とこの映画を観に行ったら、それぞれ違う答えが出てくるでしょう。
そうやって、どうするべきなのか話し合うところまで楽しめる映画になっているんじゃないでしょうか。
自分なりの答え
ある意味逃げなんですが、この場合どちらの選択も正しさを求めることはできないように思いました。
1人の犠牲を選ぶか80人の犠牲を選ぶか比較することはできず、私の価値観からはどちらも間違いだからです。
それでも選択は、しなくちゃいけません。
私は、この先に80人程の犠牲が想定される場合、ミサイルを打たないという選択はないと思いました。
といっても、1人少女の命を軽んじているということではありません。今作のように最大限、犠牲が避けられるように努力する必要はあります。
それでもミサイルを撃ち込む決定をするのは、単に「責任」の問題に尽きます。ミサイルを撃ち込んで1人の犠牲の責任を背負うのか、無視して80人の犠牲の責任を負うのか。
私が当事者だとしたら、そこの損得感情が決定の要因になります。
80人の犠牲を背負いこむよりマシなような気がするのです。
というように、この決定には恥ずかしながら正しさみたいなものは、すでに追いかけていません。
正しさを求めること自体が本質的にできないのだと思います。
テロとの戦いはいくらこちらから避けようとしても、避けられるものではありません。もはや、不可抗力と言って良いと思います。
正しさを求めるならテロという手段を無くしてしまわなければいけない。ただ、そんな絵空事を可能にする方法論は世の中には存在してないことは、誰もが理解しています。
恥ずべき作戦だと言う人もいましたが、恥ずべきだと批判するならそれはまずテロに対してです。テロがなければ、こんな作戦もそもそもないわけなので。
なぜか批判の矛先を間違えている人たちというのが、政治活動の中にもありますよね。
そういう人たちは、いかに自分たちが正しいかを主張することが目的なので、色々条件があることは無視してしまうんでしょうね。
といっても、私自身専門家でも熱心なワケでもないので、ひょっとしたらこの問題に対して明確な正しさを主張する余地があるのかもしれません。
皆さんは、どのように答えを出しますか?
解釈は人それぞれなので、色んな人の意見に私は興味があります。
こういう考え方もあるよ!というものがあれば是非コメントを残して行ってください!
まとめ
この問題って、一昔前に流行ったこれから『正義の話をしよう』にそっくりですよね。
私も読んだはずなんですけど、びっくりするくらい何も覚えてないです。笑
もう一回読み直して、内容を理解した上でこの問題を考えるとまた違う答えが出るかもしません。
また、今作ではドローンを操作する兵士の心情というのは一つの要素でしかありませんでした。
しかし、映画『ドローンオブウォー』では無人戦闘機ドローンにより、戦地に行かずして空爆を行う現代の戦争の実態と、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しめられるドローン操縦士の異常な日常をリアルに描いています。
今作が気になった人は、合わせて見るとより面白いんじゃないでしょうか。
ただ残念ながら、U-NEXTなどでは今の所、配信されていないようです。TSUTAYA DISCAS/TSUTAYA TVなら30日の無料体験で借りることができるようです。
『アイインザスカイの』予習・復習でチェックしてみてください!