映画 『ブルーに生まれついて 』感想ネタバレ ラストシーンでジェーンはなぜ全てを悟ったのか?【ネタバレ】
イーサン・ホークが、伝説のトランペット奏者であるチェット・ベイカーを演じた「ブルーに生まれついて」 が11月26日に全国公開されました。
黒人ミュージシャンばかりの1950年代のモダンジャズ業界の中で、唯一白人でありながら絶大な人気を持った実在の人物を描いているそうです。
ドラックにおぼれどん底の生活を送るなかで、ひとりの女性との出会いにより再生の道を歩んでいく姿を描いています。
上で「そうです」と言っている通り、私は音楽に疎いので、チェット・ベイカーのことは知りませんでした。
ジャズの知識はというとマイルデイビスくらいは名前だけなら聞いたことがあるという程度です。
ファンの方からすると「なんで見に来たし。」と思われそうですが、結構伝記的な映画好きなんですよね。笑)それに、音楽映画も。
内容としては、いわゆる破滅型の天才をおしゃれな映像と音楽と共に描いていて、藝術の秋にぴったりな作品だなと思いました。
愛とドラックと音楽。映画の中では決して珍しいモチーフではないので、人物やジャズに疎くても十分楽しむことができました。
楽器のできる男がかっこいいってことなら、音楽を好きじゃなくてもみんなそう感じますしね。
逆に知り過ぎているからこそ、思い入れが強いからこそ、かえってひっかかる部分があるという人もいたかもしれません。
そして、最後ジェーンがリングを託して去ったシーン。なぜ、演奏を見ただけでチェットが何をしてステージに立っているか分からないというのをSNSやレビューで見かけました。
この点に関しても私なりの解釈を書いておきますので、消化仕切れていない人がいたら見ていってください。
※これから先、映画本編のネタバレが含まれます。また、内容は批評や論評ではなく、感じたことを書き出しただけのものです。友人と見終わった後に「あーだこーだ」言いい合う時のような軽い気持ちで読んでいもらえると嬉しいです。なお、コメント大歓迎なので気になったことがあれば、是非コメントを残して言ってください!
人間味溢れる天才トランペット奏者
精神的に弱く時に子供のようになってしまい、女、酒、ドラックに溺れてしまうチェット・ベイカー。
女性関係も二度の離婚歴がありゲスすぎる。
ただ、映画を見ているとそれでもどこか憎めないのは、トランペットに傾ける思いや情熱が本物であることが伝わってくるからなんでしょうね。
正直、こういった破滅型の天才には共感できるところがほとんどありません。
むしろ、こうなってはいけないなと教訓にしなきゃいけないくらいに感じます。
入院をしてもお見舞いに来る友人が一人としていない人間関係。
父親との関係をどうやっても修復できない不器用さ。
結婚を考えている恋人の両親に対する対応。
そして、最後には復活のチャンスのを掴む為のヘロインへの回帰。
恋人・ジェーンの為にちょっとでもメタドンを手にするかと期待した私が、馬鹿でした。
ブルーに生まれついた男の話だったことを忘れていました。
このブルー。
曲名として、色として、英語で憂鬱の意味として色々かかってるんだろうなとは思っていたんですが、そこにジャズの専門用語でもあるブルーノートスケールにも関係してるみたいです。
ちなみにブルーノートスケールは、音楽が疎い私にはウィキを読んでみてもどんなものかわかりませんでした。笑
どこまで行っても女と薬にだらしない、音楽以外に取り柄のない捨て猫のように弱々しい男。
けど、やっぱ絵になるんですよね。笑
だからこそ、スポットライトを浴びた時は抜群にかっこいいし、一本の映画になるのは疑いようのない事実です。
ただ、この映画ではそのかっこいいシーンが最初と最後にしか出てきていません。
本当は、もっと栄光の時期がたくさんあったのだと思います。私は、活躍していた時期の音楽を絶対チェックして聞いてみたいとこの映画を見て感じました。
恋愛映画としても素敵
チェットを献身的に支え続けたジェーンは、すごく素敵な女性でしたね。
白人男性と黒人女性とのカップルというのも映画で見るのは珍しくて新鮮でした。
本当、どん底に落ちたところで知り合った男にここまで献身的に尽くせる女性は現実にはいないですよね。笑
才能と実績はあったにしても復活は無理と言われた状態で、全てを失った男です。
彼女がいたからこそ、復活を果たすことができました。復活どころか命を救われたと言っても過言ではありません。
お互いの悲願でもある復活をなんとか見にくることができたジェーン。
誰よりもチェットを見ていた彼女だからこそヘロインを使って舞台に立っていることを悟ってしまいます。
吹き終わった後の、口を拭うような仕草ですね。
その仕草を見た彼女は、彼からもらったリングを置いてその場から去ってしまいました。
本来、演奏を見るだけではわからない可能性もありましたが、薬物から立ち直って欲しいと一番思っていたがだめに、わかってしまった事実。
いや〜。せつなさが半端ないです。こういう演出も単なる伝記作品にならないように工夫されていて憎かったですね。
薬物とアーティスト活動の親和性に関して
奇しくもこの映画を観終わったあと、日本の某有名アーティストが覚せい剤で再逮捕されてしまいました。
SNSなんかを見ていてもチェットの薬物使用に関して単純に断罪できないという意見が結構ありました。
アーティスト活動をするにあたって、薬物は必要悪になることがある。もし、使っていなければこれほど愛される曲を演奏していたとは限らない。
といった感じです。
ただ、そういう人たちに喧嘩を売るわけではありませんが、今の所違法薬物を使うことでアーティスト活動が捗るってことは言い切れないじゃないかと思います。
本人たちがそう自覚してるのは間違いありませんが。
詳しいわけではありませんが、科学的根拠もないでしょう。
現実は、薬物の効果で自分のインスピレーションが素晴らしいと思いこめるようになる。
聞こえる音が心地よく感じられる。
いずれも、主観的にそう思えるという錯覚の部類で、演奏のパフォーマンスが明確に上がるということではないんじゃないでしょうか。
それをあたかも、客観的に見てパフォーマンスが上がるものとしてみるのはどうかと思いました。
もう過ぎたことに仮定をしても仕方ありませんが、違法薬物に手を出さずに音楽に集中したほうが、禁断症状などに悩まされることもない。
歯を失うこともない。
音楽に集中できるため、結果もっと素晴らしい演奏をできた可能性もあったんじゃないかと私は、感じました。
まとめ
音楽、映像、ラブストーリーどれをとっても単なる伝記映画に収まらない素晴らしい映画だったんじゃないでしょうか?
主演のイーサンホークも難しい役を見事に演じきっていました。
ジャズを普段聴かなくても楽しめるし、むしろこの映画をきっかけに彼のことを知ってジャズを好きになることができるような作品でしたよね。
実は、ジャズをテーマにした漫画で『BLUE GIANT』というサックスを吹く高校生を描く作品が前々から気になっていました。
とりあえずこれを読んでジャズに詳しくなってやろうと思います!
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絶対に面白い!関連作品のピックアップ
私は、学生のころを『スウィングガールズ』という映画が好きで何度も見ていました。
これもジャズをテーマにした青春ガールズムービーといった感じです。
決してジャズ好きな人を唸らせるような作品ではないのですが、エンタメ作品として気軽に楽しんで見ることのできる映画になっています。
気になる人は、是非チェックしてみてください!