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【パナマ文書】日本でタックス・ヘイブンを批判できる人がいない理由。機会があればみんな租税回避しますよね?

パナマ文書の流出でタックス・ヘイブン=脱税=悪だから、徹底的に叩いてやれという風潮が見られます。正直言ってこの問題を理解する為には、専門的な知識が不可欠です。

少し調べてみると批判を展開している人たちのほとんどが、脱税のイメージが先行してこの問題に対して正しい認識ができていないことがわかりました。積極的にメディアで取り上げられていないこともあって、ネットで真実を見てしまったw系の盛り上がり方になっていると感じるのは私だけでしょうか?

ネットでは、次のような批判がされています。
 
ネット上の声
タックスヘブンは合法だからオッケーみたいな議論があるが合法性と正統性は違う。合法性は「フェアであること」と結びついて正統性を獲得する。だから「アンフェア」とみなされたら直ちに正統性は剥奪される。パナマ文書がアンフェアさを暴露した局面で合法性を言い立ててもなんらの正統性もないのよ。
タックスヘイブンって、金持ちの一人勝ち、格差の固定、資産や課税の不公平から問題視されているんだろうに、「違法でも脱税でもないからw」ってドヤってる人はちょっと違うんじゃないか。合法だからこそマズいし、それゆえパナマ文書がこんなに注目されたのでは。
パナマ文書流出
「脱税を許すな!」国民はもっと怒れ !! -
1位 柳井正  1兆8419億円 ユニクロ
2位 孫正義  1兆6837億円 ソフトバンク
3位 佐治信忠 1兆3221億円 サントリー
4位 滝崎武光   9379億円 キーエンス
5位 三木谷浩史  6441
タックスヘイブンに見る日本の深い闇amba.to/1VbyU75パマナで脱税してた55兆円をしっかり納税していれば、所得税も消費税も揮発油税、酒税、相続税、たばこ税、その他の税も全く不要なのです。
#パナマ文書
Twitterより
 本来納められるはずだった税金が納められず、国民の生活が圧迫されている。この不平等を正せば、国民の負担が軽くなるはずだということのようです。また、この事実を報道しないメディアにも厳しい批判が集まっています。
 
しかし、こういった意見に誤解が含まれていることが、識者たちからは次々と指摘されています。

問題を単純化して脱税と結びつけてしまっていると、とんでもなく恥をかくことになってしまうかもしれません。

パナマ文書騒動にまつわる幾つかの誤解 

そもそも必要な税金を払っている

日本の税制では、日本の親会社がタックスヘイブンを含む軽課税国~無課税国に子会社をつくって投資をした場合、子会社で得た利益を親会社の利益に乗せて課税する仕組み(外国子会社合算税制。詳しくはググれ)があるため、基本的に租税回避できません。
(引用:パナマ文書騒動にまつわるいくつかの誤解 - はてな匿名ダイアリー )
ネット上ではタックス・ヘイブンを利用することは合法的な脱税で、決して容認できないという意見がほとんどです。
 
しかし、この記事では実質的に日本にはタックス・ヘイブンを利用している企業に対しても課税する制度があり、必要な税金は納められていると主張しています。
 
コメントを見てみてもこの主張に対する明確な反論ができている人がいないようなので、日本企業の場合、事実関係としてこのようなケースである可能性があります。

メディアが取り上げないのは、風説の流布の拡大を恐れているから

かりにパナマ文書に記載の日本企業がリストアップされたらどうなるでしょう。「租税逃れだ!」と方々から批判を受けるのではないでしょうか。実際には上記の通りほとんどの企業は親会社で相応の税負担をしているにもかかわらず、です。
パナマ文書騒動にまつわるいくつかの誤解 - はてな匿名ダイアリー 
 
この方が主張するように、タックス・ヘイブンを利用していても必要な税金をしっかりと払っていたとしたら、メディアでリストアップすることによって、企業価値に関わるような言われのない批判を扇動してしまうかもしれません。
 
そう考えると、大企業が名を連ねているから関係のあるメディアが日和ってあまり大きく取り上げられないというのは、少し事情が違うようです。

個人が利用している場合について

 上で示されているように企業の場合は、租税回避は基本的にできない構造になっています。
 
ただ、個人が租税回避している場合について言及されていません。
 
個人の場合は単に私腹を肥やしているだけで、このケースに関してはきっちりと取り締まって課税すべきだという意見もあると思います。
 
しかし、個人の租税回避の場合は必ずしも税収に結びつけることができない可能性も高いんじゃないかと思います。
 
それは、個人の資産家にはリバタリアンといわれる人が多いためです。
 
リバタリアンは、私的財産権もしくは私有財産制は、個人の自由を確保する上で必要不可欠な制度原理と考えています。
 
そういった人たちは、そもそも所得に課税されることを悪とすら考える傾向があるようです。
 
結果、タックス・ヘイブンを利用できなくなれば拠点を完全に外国に移してしまうということがおこります。
 
徹底的自由主義を貫いている人たちには、日本に対しての忠誠や貢献ということにあまり意味を持ちません。
 
そのような立場の人たちに課税をするということは、税収を増やすという名目では全く成果をあげられないでしょう。
 

そもそもタックス・ヘイブンを利用した節税は合法

 タックス・ヘイブンとは、非常に低い税率、あるいは0と定めている国のことで、世界中の企業や個人がそこにペーパーカンパニーを立ち上げて利益を送金することで、自国の税金を回避していると言われています。
 
こういった仕組み・システム自体には違法性はないので、明らかになったとしても実はあまり問題とならない人もいるようです。
 
犯罪組織がマネーロンダリングのために利用していると言われており、全く問題がないというわけではありません。
 
しかし、違法性がない企業や個人の節税対策を取り上げることに公共性がないから、メディアとしては報道しなという立場には、一定の理解ができるんじゃないでしょうか。

 

パナマ文書 : 「タックスヘイブン狩り」の衝撃が世界と日本を襲う
 

 

問題の本質は不平等の告発だという主張 

見ようによっては「金持ちに対する貧乏人のやっかみ」ととられかねないパナマ文書の流出劇ですが、事の本質は別の場所にあります。それは、本来支払われるはずだった税金が納められていないために、税収が少なくなっているという現実であり、その減収を補うために、本来は必要なかったかもしれない増税が行われていることである、とされています。 引用
 確かに、一般の人は消費税や源泉徴収によって自動的に引かれる税金ばかりで節税する機会すらありません。
 
一方、お金持ちや大企業などだけがノウハウとして行うことができるというのは、不平等だというのも理解できます。
 
ただ、この不平等を国が介入して法規制すべきだというには疑問が残ります。なぜかというと企業の競争力や成長の機会を奪うことになる場合があるからです。
 
租税回避を行った場合、企業には確かなメリットがあります。
企業としての売り上げや役員の報酬や社員の給料に反映させることができ、さらには設備投資などに投入することができる。
事業展開や事業規模をより大きく拡大していく上で、通常よりも速いペースで企業を成長させていくことができる。
引用
私には、企業が高い競争力や成長を維持することで、社会全体の利益になりそれが国民一人一人に還元されるという可能性を安易に無視して良いとは思えません。
 

徴税には決定的な限界がある

タックスヘイブン問題は、国家権力の徴税能力の限界という問題と言い換えることができる。

タックスヘイブン問題は一国だけで解決できる問題ではない。ここを勘違いすると、よくわからない政府批判や国内メディアの批判をやることになる。政府の無能力が問題なのであって、できるくせにやっていないことが問題なのではない。ある国のなかで生み出された富の一部を吸収して再分配するという近代国家の資金環流モデルそのものに穴が空いてしまっている。その穴は国家の外側につながっていて、外側の世界は自分の思い通りになるわけではない。
パナマ文書を見る視点より引用


タックス・ヘイブンを利用している人や企業から徴税するということには、構造的な問題があって日本だけではどうにかできることではありません。

仮に調査で何もかも明らかにしてしまったとして、今後タックスヘイブンの利用に規制をかけても、クリアできない課題があるのは間違いないようです。

何も考えずにとにかく調査、公表、法規制をおこなったとしても期待したような効果が得られないのなら、正直意味がないと言わざるを得ません。

効果が得られないのであれば、ある程度自由を認めていた方が経済的には良いはずです。

それでも調査して公表すべきだという人はどんな理由があるんでしょうか?

「本質的な問題や構造的にクリアできない課題なんてどうでも良い。とにかくなんとかしろ」と言うんであればそれは単なるクレーマーと一緒です。

世界中の国が同じ構造的な問題を抱えています。

タックスヘイブンを行っている国というのは、途上国家の生存戦略としてこういった構造的な問題を利用してビジネスをおこなっているのです。

国内問題として公平性を訴える人たちは、国際問題としての格差や公平性に関してはどのような答えを持っているんでしょうか?

結局のところ自分が得をすればそれで良いということでは、この問題は解決できないのは間違いありません。

機会があれば誰もが租税回避する

 例えば、景気が良くなりほとんどの国民が投資にお金を使える余力がある時代が来たとします。
 
一切利益に対して税金がかからない金融商品Aと同じ価値で通常通り税金がかかるBがあるとき、自分は国への忠誠や貢献という観点から税金がかかるほうを選ぶよという人がどれほどいるでしょうか。
 
私たちに一般人にとって、違法性がないのであれば、Aの商品を選ぶことは当然です。
 
もちろん、政治家など社会的な立場上、自分の利益だけを求めることを道義的な責任から避けなければいけない人たちがいます。
 
日本において、世界各国で問題になっているような政治家がタックス・ヘイブンを利用していたという不名誉な事実は、今回の流出では明らかになっていません。
 
まだ多くの人たちが試されていないだけで、誰もが機会があれば租税回避を行います。
 
直接的に自分の利益になるときは租税回避ありで、そうでない場合はダメだというのはあまりにも感情的な批判なんじゃないでしょうか。
 
企業の場合は、タックス・ヘイブンを利用して確保した余力が、商品やサービスとして社会の利益となって、知らないうちにその恩恵を私たちは受けているかもしれません。
 
社会としての利益やまわりまわって自分自身が得られるであろう利益まで考えたとき、今のような批判は起きないでしょう。
 

追記 なぜ日本が調査を行わないかに関して

anond.hatelabo.jp

 なぜ日本が、調査を行わないかに関しての記事もでてきました。これで、いままで行われていた批判がほとんど誤解に基づくものだったことが明らかになったと思います。 

世界各国でパナマ文書への積極的な反応が見られるのに、日本では見られない。それはなぜか。日本の政治家の名前が挙がっていないからです。ほかの国々で「調査する」など積極的な反応がなされているのは、名指しで自国に関わる主要な政治家、人物の名前が挙げられていたからです。確認のために調査するのは当然です。

また、「パナマ文書」そのものは、ICIJしか手に取ることができないので、司法国税独自調査するのは不可能です。

最後に

正直に告白するとこの問題に関してはあまりにも知識不足で正しい認識はいまだにできていません。
 
ただ、知識不足という点に関してはすでに多くの批判を展開している人たちもおなじなんじゃないかと思います。
 
批判をするためには、問題に対して正しい認識をする必要があります。
 
メディアであまり大きく取り上げられない問題なので、今回紹介したような記事のように、正しい判断をできるような記事がたくさん出てきてくれるとありがたいですね。
パナマ文書公開とタックス・ヘイブンの陰謀

パナマ文書公開とタックス・ヘイブンの陰謀

 

 

 
したっけ〜