ネタバレ感想『幽麗塔』は本格的なサスペンス漫画だ!白い影による恐ろしい犯行とは?【3行で分かるあらすじ】
漫画「幽麗塔/幽霊塔/ゆうれいとう」は、不気味な時計塔をめぐるミステリーサスペンスです。冒頭のシーンはかなりショッキングな展開でその世界観に一気に引き込まれます。一度、読み出したら絶対にハマる本格派のサスペンス要素も必見です。 この記事では登場人物やあらすじ、ネタバレを含む感想をお届けします!
さてー!
年末年始に読んだ怖い漫画!第2弾です。
先日、紹介した『ししゅうごく』とは、だいぶテイストの違う作品になっています。
冒頭のシーンで「かなりヘビーなホラー漫画だ」と思って読み始めたんですが、読み進めるうちに本格的なミステリーの深みや重厚感がでてきます。
内容としては、時代背景も含めて古典的な探偵ものを連想させる本格的なミステリーサスペンスといった感じの作品です。
タイトルの『幽"麗"塔』も、アリス・マリエル・ウィリアムソンの小説『灰色の女』に基づいて書かれた黒岩涙香の『幽"霊"塔』と無関係ではないと思われます。
また、表紙イラストを見て貰えば分かる通り、画力がハンパないです。そして、コマ割りもかなり凝って作られていて、まさに漫画を描くのが上手い人なんだというのが嫌っていうほど伝わってきました。
乃木坂太郎先生の漫画をまだ読んだことがない人は、導入として試しに読んでみるのも良いかもしれません。
【作品情報】
- 実写化もされている大人気漫画『医龍』の評価が高い乃木坂太郎先生の作品。
- 2011年5月よりビッグコミックスペリオールにて連載がスタートし、全9巻で完結。
登場人物
天野太一(タイチ)
カストリ雑誌ばかり読んで、自堕落な生活をしている青年。
人からの嘲笑されるのに耐えられず、良く分かりきった嘘をついてしまう。
友人もいなければ、お金もないし何も持っていないと自己憐憫している。
※カストリ雑誌:大衆向けの雑誌のこと
沢村鉄雄(テツオ)
女だけでなく、男でも惚れ惚れするほどの美しさを持つ人物。
良い車に乗り、でかい家に住み何不自由ない生活をしている。
幽霊塔の秘密を知っているようだが…。
花園恵
タイチが好きだった、今は記者をしている女性。
母の病気の為に望まない結婚をしようとしている。
三村辰彦
花園恵の婚約者。結婚を条件に母の入院費を肩代わりする約束をしている。
学生時代は、イジメっ子だった。
3行で分かるあらすじ
※面白さを損なうような核心的なネタバレを避けつつ、3行でエピソードごとのあらすじをまとめていきます。
第1幕
仕事もせず毎日カストリ雑誌ばかり読んで、家賃も払えないほどの自堕落な生活を送っていた天野太一は、偶然かつての学友・花園に出会う。
本当の自分を知られたくない気持ちからついた嘘がバレそうになった時、謎の美しい青年に話を合わせてもらいその場を救われる。
その青年に幽霊塔の管理人になることを勧められ応募するが、覆面姿の白い影に背後から襲われ気づいた時には幽霊塔に磔にされていた…。
第2幕
窮地を救われたタイチは、幽霊塔が単なる時計塔ではなく、莫大な財宝が隠された金庫であることを知らされる。
テツオにその金庫を開けるパートナーになることを求められたタイチは、その役目を快諾。
車で自宅まで送って貰うが自宅アパートは焼失しており、帰る場所を失ったタイチはテツオの豪邸に泊めてもらうことになる。
第3幕 ともだち
2人で朝食を摂っている時、タイチは自分が襲われたのはテツオと間違われたからではないかという懸念を打ち明ける。
殺されたくないタイチはこの話を降りることも考えるが、学友についた嘘がバレないよう取り繕ってもらう事を条件に踏みとどまる。
共通の趣味を持つ2人は、タイチの空回りはあるものの仲良くなり、いよいよ幽霊塔に近づこうとし始めるが…。
第4幕 脅迫の仮面
ひき逃げの被害者の立場をでっちあげ、幽霊塔の持ち主の娘に接近する事に成功するタイチ。
しかし、その強引なやり方に愛想を尽かし逃げ出そうとするが、またも偶然花園さんと出会い思い留まる。
そんな中、テツオとタイチを幽霊塔で襲った男にある関係性がある事が明らかになる。
第5幕 丸部家の内側
タイチは道中、丸部が検事でありその立場に相応しくない人格破綻者であることを知る。
娘の友人の兄として幽霊塔の雑用係になれないか交渉するも一筋縄には引き受けない丸部。
3時間以内に幽霊塔の窓や絨毯に使うサンプルを持っていく事が出来れば採用、という無理難題を突き付けられるこになってしまう…。
第6幕 花園さん
テツオと協力して無理難題をなんとかクリアし、丸部に認められることで、幽霊塔の雑用係になることに成功する。
タイチは、調子良く花園さんに連絡を取り、自分が幽霊塔で襲われたことを打ち明ける。
記者魂に火がついた花園さんは、幽霊塔に赴き取材を敢行するも覆面の男に遭遇する。
第7幕 犯人の名
幽霊塔にて花園さんの遺体が発見され、自分が余計なことを言わなければと後悔するタイチ。
娘の死を悲しむ花園恵の母の前にして、金を借りていたので治療費は自分が引き受けると嘘をついてしまう。
後に引けなくなったタイチは、自分を襲い花園さんを殺した覆面の白い影を死番虫と名ずけ復讐を決意する。
第8幕 どこにでも
タイチは、テツオの部屋でナイフと死番虫の覆面を見つけアリバイを問い詰める。
しかし、テツオが犯人だった場合、自分が共犯になる可能性を考え一旦追求を保留する。
丸部と刑事たちは、犯人像を探って捜査を開始しようとするが、現場に残された血の丸印など謎は深まるばかりであった。
ネタバレ感想
ストーリー展開は本格ミステリー小説を読んでいるかのよう!
この漫画を読んで感じるのは、漫画家さんの小説愛です。
所々に古典的な名作探偵小説やミステリーの名前が出てきます。
ページをめくる毎に感じる重厚さや細かい演出や巧みなコマ割りは、こういった作品をたくさん読んでいる賜物なのではないかと感じました。
といっても、この漫画家さんの作品を読むのは初めてだし、そういったバックグラウンドがあるかどうかは、私は知りません。笑
ただ、知らないと書けないだろうなという感じはありありと伝わってきます。
なので、古典的なミステリーなどに興味のある人なんかには絶対刺さる漫画になっているはずです!
キャラクター設定や心理描写が巧み過ぎる!
主人公の天野太一は、かなりダメダメな人間として描かれています。
しかも、自分のプライドを守る為にその場をつくろうような嘘をポンポンついてしまうという…。
その嘘は、時に単なる見栄であることもありますが、恵の母に対しては気を使わせずに入院費を支払うための優しい嘘として描かれていました。
嘘はいけないというのは、一般論としてその通りですが、色んな嘘があって時には良い嘘まであるということを気づかせてくれます。
中々主人公としては、珍しいタイプのキャラクターですよね。ただ、私は妙に感情移入してしまっています。
と言うのも、「劣等感をなんとか取り繕ろうとしてついてしまう嘘」というのは、自分の中にも心当たりがあるからです。
誰にでも1度はありますよね?その場で自分が傷つきたくなくてついてしまう嘘。自分だけだったら恥ずかしけど…。笑)ありますよね?みんな。
普段は、気づきたくない自分の内面を描かれているようで、正直恥ずかし気持ちになりました。
こういったキャラクター設定、他では見られないタイプで「上手だなぁ」と本当に感心しました。
あと、心理描写もなかなか深かったです。恵がタイチの付いたお金持ちだという嘘の真偽を確認しようとするシーン。
「出来ればお人好しのタイチが、スポンサーになってくれれば」というさもしい感情を見透かされる一連の演出やコマ割りは、純文学を読んでいるかのようでした。
そこの心理描写は、個人的に本当に好きです。笑
出来れば、そのコマを貼りたいけど色々問題がありそうなので、本編を読んで確認してください!
まとめ
「覆面をかぶった白い影の正体はなんのか?」「テツオと白い影との関係は?」などまだまだ、謎だらけです。
ここまで読んで、次の展開が気にならない人はいないですよね。
全9巻に渡る作品で、ミステリーとしては比較的長い作品なので、土日など休みの日に一気読みできると良いですね。