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映画 『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ 』感想 ラストシーンの帽子の意味は?【ネタバレ】

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(C)Genius Film Productions Limited 2015

コリン・ファースジュード・ロウの主演で話題の『ベストセラー』を本日、劇場で観てきました!

1920年代にアメリカ文学の数多くの名作を手がけた編集者マックス・パーキンズと37歳と短命だった小説家トマス・ウルフの人生と友情を描いた作品です。

ロンドンの劇場ドンマー・ウエアハウスで芸術監督を務めて、今回が長編映画の初監督となるマイケル・グランデージがメガホンをとりました。

公開間もない作品ですが、残念ながら客席はまばら。俳優目当ての映画好きな人が見に来てる感じでした。

私は、職業にスポットを当てた作品が好きなので、期待値はやや高めでの観賞です。

映画に限らず、出版の裏側を描く作品って面白いものが多いですもんね。

内容としては、幸せであるはずの家庭を顧みず小説を作り上げるという仕事に没頭する作家と編集者のバディ映画といった感じでした。

高尚な文学なんてものは一生理解できないと思ってる私でも、物事に熱意を持って取り組む姿勢はカッコよくて、十分楽しんでみることができました。

ただ、トムの生き方などには、なかなか共感できないものも多かったです。まあ、そこは『ジーニアス(原題)』だからと距離を取るしかないですよね。笑

あと、ラストシーンの帽子の解釈ですが、SNS等ではいろいろ言われています、が正直はっきりとした理由がよくわかっていません。一応私の解釈を書いておきますが、わかる方がいたら、コメントを残していただけるとありがたいです。

※このあとの記事には、映画本編のネタバレが含まれます。また、内容は批評や論評ではなく、感じたことを書き出しただけのものです。友人と見終わった後に「あーだこーだ」言いい合う時のような気持ちで読んでいもらえると嬉しいです。なお、このブログは一番コメントの集まるブログを目指して運営しています。気になったことがあれば是非コメントを残して言ってください!

仕事に対する熱意と二人の絆について 

海外、特にアメリカの映画だと家族愛がモチーフになることが多いですよね。

しかし、かなり珍しいことに、この映画では完全に家族が蚊帳の外になってしまっています。

冒頭のはじめてトムの作品に目を通している時、家の中で落ち着いて読める場所を探して結局クローゼットに行き着いたところなんかは、正にこの映画そのものを象徴する演出だったんじゃないでしょうか。

バディ映画の定番は刑事ものですが、この映画では作家と編集者のコンビでそれを再現している感じがしました。

トムは、自由奔放な情熱家でかなり変わり者でもあります。

一方、パーキンスは冷静で知的な紳士です。

何か某有名ドラマ『相棒』を見ているかのようです。

同じ目標がなければ、決して交わることのなさそうな二人ですが、ぶつかり合いながらも仕事を通して親子と言っていいほどの絆が生まれていきます。

2人の掛け合いが、面白いコントを見ているようでした。

正にバディ映画的。

ただ、刑事バディではないので、ドンパチもアクションもなく、ほとんどが机の周りでの共同作業でした。

パーキンスは、時には寄り添い時には叱りつけ正に父親のようにトムに接していましたよね。

創作活動を通して喜怒哀楽を共有していふ2人が家庭を顧みないというのは、ある意味当然なのかもと思わせられました。

一方、理解を示すパーキンスの妻と敵意を向けて時には自殺未遂までするトムの奥さん。

この対比も実話にも関わらず、映画をやっていてお腹いっぱいになる展開でした。

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(C)Genius Film Productions Limited 2015

かつて、トムが住んでいたアパートの屋上でニューヨークの街並みを俯瞰するシーンなんかは、なんだか文学的な感じがして、一番印象的でした。

なんだか、芸術の秋にぴったりな映画ですよね。

トマス・ウルフという天才作家について

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(C)Genius Film Productions Limited 2015

私は、文学に疎くてこのトマス・ウルフという作家は、この映画を見るまで知りませんでした。

正直、常人には彼の言動はエキセントリック過ぎて共感できないものが多々ありましたよね。

パーキンスに出版を認められた時、まだビルの中なのに奇声をあげる。

奥さんがいるのに、黒人の娼婦にちょっかいをだす。

スランプに陥っているヘミングウェイや奥さんに向けられる優しさのかけらも無い言葉。

あげ始めるとキリがないですよね。

天才であるが故の奇行だとしても、受け入れがたいものがあります。

だから、脳の結核という聞いたこともないような病気によって命を落とすシーンも、決して泣けるという感じにならなかった人も多いと思います。

むしろ、どんなに成功してもこんな風に振るまっちゃダメだなと思わされるほどです。

実話をも元にしてるから、こんなこと言っちゃいけないんでしょうけど、寿命を全うするよな大往生でしたって結末なら、ゴミを投げつけられるレベルじゃないですか?笑

短命に終わり、最後の手紙で想いを伝えることが免罪符になっている感じがしました。

どうしても気になったところとラストの帽子を脱ぐシーンについて

編集をテーマに扱ってるだけあってか、心理描写に情景描写、起承転結が上手くまとまった作品だと思いました。

ただ、表題の重要性が劇中でも述べられているのに、この映画のタイトルは全然見てみたいと思うようなものでも、文学性を感じるものでもないのは、どういうことなんでしょうか?笑

素人で感想を書くことしかできないので、文句をつけるのがおこがましいのですが、素朴な疑問です。

みなさんは、どう思いましたか?

例えば、2月に公開される映画『たかが世界の終わり』なんかは内容もキャストも全然知らないけど見たくなるようなタイトルだと思います。

それに比べると…って感じがしますよね。

こんな深い意味があるんだよとか分かる方がいたら教えてください!

あと、基本帽子を脱がないパーキンズが最後手紙を読むところで帽子を脱ぎましたがあれは、どういう意味だったんでしょうか?

私の解釈では、プロ意識を持って気を引き締めて仕事を行っていたことの象徴として帽子をかぶっていた。

それが、最後に私信として届いたトムの文章を仕事人ではない一人の人として読んでいるんだということを表すための演出だったのかなと思いました。

ただ、正しいかどうかははっきりしていません。

この点も、わかる方がいたら教えて欲しいです!是非!

まとめ

文庫 名編集者パーキンズ 上 (草思社文庫)

ちょっと文句もでてしまいましたが、夢中になって一冊の本を作り上げていく二人の創作活動は見ているだけで、眩しく感じました。

原稿が、一冊の本になって私たちの目に届くようになるまでに、どれだけの熱意がそこにあるのか普段は絶対見ることができませんよね。

正直、面白いか面白くないかくらいの判断基準しか持たずに、さらっと読んでしまっているのが申し訳なくなりました。

名作が生まれるには、父たる編集者の存在が必要なんですね。

こんど、小説を読む際には必ず編集者の人にも目を通しておきたいと思える作品でした。